うつ病原因

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うつ病の原因 は? いつもと違うところがあれば声を掛けて!

公開日
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執筆:須賀 香穂里(ライター)
 
 
うつ病の原因 をご存知ですか?
うつ病は年代、世代を問わず誰にでも発症する、病名を耳にすることが多い精神疾患です(1)。
我が国のうつ病患者は2000年代に入ってから増加を続け、2014年には、総患者数が約111万人になっています。有病率ベースでいうと、障害有病率2.7%、およそ10~15人に1人が発症しているとされています(1)。また男女比では、女性のほうが男性のおよそ2倍、うつ病を発症しやすいと報告されています(1)。うつ病は自殺との相関関係もあり深刻な病気です。
うつ病は、落ち込んだ気持ちが継続するいわゆるうつ状態が長く続く病気です。悲しみや不安というマイナスな感情がいつまでも治まらなかったり、何事にも興味がわかない、疲れが取れない、何もかも億劫だ…といった無気力感に襲われたりします(2)。
 

うつ病が起こってしまう原因とは一体何なのでしょうか。本記事では、まずうつ病の症状について説明し、続いてうつ病の原因について詳しく説明します。
 
 

鬱症状:うつ病の2つの基本症状

 
DSM-5(米国精神医学会発行『精神疾患の分類と診断の手引き』最新版)の分類では、うつ病は「抑うつ症候群」となっています。 気持ちが憂鬱になる「抑うつ状態」と気分が高まる「そう状態」が繰り返される症状が生じるものを「双極性障害:躁うつ病」と呼びます。かつてはうつ病と双極性障害は、同じ「気分障害」分類に含まれていましたが、DSM-5最新版では異なるカテゴリーとなっています。
 
うつ病と診断されるのは、うつ病の二つの基本症状である「抑うつ気分」「興味・喜びの喪失」の何れかを、継続的に14日以上経験している場合です。以下に「抑うつ気分」「興味・喜びの喪失」の具体的内容について説明しましょう・
 
 

抑うつ気分

抑うつ気分とは、「気持ちが落ち込む」「気がめいる」といった、悲しみ、空虚感、絶望感に、毎日、ほとんど一日中苛まされている状態を指しています。ただし、子どもや青年の場合、落ち込むよりも、イライラする、怒りやすくなる等の症状が生じることもあります。
 
 

興味・喜びの喪失

興味・喜びの喪失とは、日常のほとんどすべての活動に対する興味や喜びが、極めて低下してしまった状態を指します。
 
 

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うつ病の7つの主要症状

 
以上述べたうつ病の基本症状に加え、次に示した7つの症状が「うつ病」時によく起こる主要な症状です。
DSM-5では、前述した2つの基本症状と併せて、5つ以上症状がみられるときに「大うつ病」と診断するとしています。
 
 

食欲の低下

食事を美味しく感じられず、食欲が低下し体重が減ってしまいます。ただし、季節性うつ病などの場合は、食欲が高まり、過食の為体重が増えることもあります。
 
 

不眠

ほとんど毎日寝つきが悪い入眠困難や、中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠障害が生じます。しかし、逆に「過眠」状態となる場合もあります。
 
 

焦燥感又は精神運動制止

第三者の目から明らかに落ち着きを欠いている、動作が緩慢になるなど、活動性が低下する「精神運動制止」の症状が生じます「。
 
 

気力の減退や易疲労感(えきひろうかん)

何事も億劫になったり、すぐ疲れてしまうといった状態になります。
 
ひどくなると「うつ病性昏迷」といって、まったく動けなくなり、何もできなくなることもあります。この場合、最悪生命にかかわる事態になることもあります。
 
 

無価値観、罪悪感

極度の自信喪失に陥り、自分に何の価値も見いだせず、周囲の人に罪悪感を感じるという状態です。 
 
 

思考力・集中力の低下

集中力、思考力、注意力が低下し、業務や家庭でミスを頻発する状態です。また、思考力の低下から、色々なことについて判断・決断が出来なくなります。
 
 

死についての反復思考

自傷行為、自殺願望、希死念慮(自分なんか生きていてはいけない、死ななくてはならないと思い詰める)、自殺企図(実際に自殺しようと行動に移す)など、死に対する考察や行動を繰り返します。
 
 

うつ病における精神疾患症状

 
統合失調症など他の精神疾患と同様に、うつ病においても、幻覚や妄想が症状として生じることがあります。
うつ病の主要な精神疾患症状の一つに「微小妄想」というものがあります。「微小妄想」の主要なものとしては、次の3つがあります。
 
・実際には該当する事例がないのに、重大な罪を犯してしまった為罰を受けなくてはならないという思い込みにとらわれる「罪業妄想」。
・実際には経済的に困っていないのに、お金がないと生活していけないと過剰に懸念する「貧困妄想」。
・実際には健康なのに、不治の病にかかっていると思い込む「心気妄想」。
また、まれですが、罪業妄想が深刻になると、「コタール症候群」というある種の「否定妄想」となることがあります。コタール症候群とは「罰を受け、身体は腐り、生きてもいなし、死ねないという責め苦が永久に続く」妄想にとらわれている状態です。
 
 

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うつ病における身体症状

 
うつ病というこころの病気が以下のような身体症状として現れることがよくあります。
 
頭痛肩こり腰痛動悸めまい、頻尿下痢、便秘、性欲減退、口渇、耳鳴り、呼吸困難感、しびれ感、冷感、胃部不快感、吐き気、悪心、関節痛など
 
 

日内変動

 
一日のうちでうつ病の症状がひどい時とそうでない時がある「日内変動」が起こる場合もあります。ただし、全てのうつ病患者の症状が日内変動を起こすわけではありません。
 
 

うつ症状の例外

 
「うつ病」の症状について説明を行ってきましたが、ここで述べた症状が生じても、大うつ病とは診断されないケースがあります。以下具体的に説明します。
●外因性うつ病のケース
パーキンソン病など「神経変性疾患」の為うつ症状が生じている場合。
・脳腫瘍、脳血管障害、感染症、代謝疾患など、一般的な身体疾患により、うつ症状が生じている場合。
・ステロイドホルモン、インターフェロン、アンフェタミン、コカイン、アルコールなど、薬物等のためうつ症状を生じている場合。
 
 
●重大な喪失が原因となるケース
・親しい人との死別や経済的破綻、災害に遭遇などによりうつ症状が生じている場合。
 
 

うつ病の原因

 

うつ病がなぜ起こるのか、その原因はまだはっきりとわかってはいません。
様々な要因が考えられていますが、現在最も主流の考え方は、うつ病は様々な要因が重なり合って発病するというものです(3)。

 

今回は以下のの4つの観点から考えられている原因をご紹介していきます。
 

<生物学的レベルの原因>
<社会的レベルの原因>
<心理的レベルの原因>
<ストレスとのかかわり>
 
 

うつ病の原因 生物学的レベルの原因

 

遺伝的要因

多くの研究から、うつ病には遺伝が関係していると考えられています。
この事実を示す研究の中では、同じDNAをもつ一卵性双生児と異なるDNAを持つ二卵性双生児の一致率を比べて遺伝的要因の関与を検証しています(2)。

 

検証の結果、一卵性双生児の一致率は25~93%、二卵性双生児の一致率は0~38%と一卵性双生児の一致率が著しく高いことが分かっています(2)。

 
この結果は、うつ病の発現に遺伝子がかかわっていることを示しています。
しかしこの研究で100%の一致率を得られなかったことから、うつ病の原因が遺伝的要因のみではないことも分かります。

 
遺伝子はうつ病発症の一要因であり、環境的な要因も影響を与えているというのが現時点での主流な見解です(2)。

 
 

環境要因

うつ病発症のきっかけとなりやすい環境要因として、以下の項目が想定されています。

 

・大切な人の死や離別
・大切なもの(仕事、財産など)の喪失
・人間関係、職場内や家族間のトラブル
 

いわゆる強いストレス状況がうつ病の原因として考えられています(4)。
これに対して遺伝的要因と関わり合うような環境要因として、生活環境や生活水準などがあり、同じ遺伝子を持っていても異なる生活環境で育てば一致率は変化すると考えられています。
 
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社会的レベルの原因

 うつ病の原因のひとつに、社会構造の変化が挙げられます。
これはまだ推測の域を出ていませんが、都市化や核家族化、個人中心の生活、仕事中心主義など、近代的な社会への成長に伴う急激な変化により引き起こされた社会不適応がうつ病のきっかけになるというのです。
 
 このことを実証することは難しいですが、社会への不適応はストレスを生み、ストレスから不安、不安からうつ状態という悪循環を生み出していると考えられます。
 
 

心理的レベルの原因

 

心理的レベルの要因として、うつ病を発症する人の性格にはある一定の傾向がみられることが明らかになっています。その傾向とは、以下に示した通りです。

 
・真面目で責任感が強い
・人当たりがよく、周囲の評価も高い(3)
 

このような性向をもつ人はストレスをため込んだり、必要以上に頑張りすぎてしまうため、こころのバランスが崩れやすいとされています(3)。
うつ病になりやすい病前性格についての研究は多く行われており、いくつかの類型が示されています。

 

クレッチマーの循環気質

1921年にクレッチマーが提唱した循環気質は、躁うつ病の患者の病前性格に多いとされています。その特徴は善良で親しみやすく、社交的であるというものをベースに、
 

・活発で性急、陽気な気質
・物静かで落ち着いている、陰気な気質
 

の両極に別れます。
 
 

下田の執着気質

1941年に下田によって提唱された執着異質は、
 
・責任感・義務感が強く仕事熱心
・完璧主義
・几帳面で凝り性
・正直
 

などといった特徴が見られます。

 
この気質の人は周囲から模範的、真面目などの評価を受けやすく、仕事の質は高いのですが、反面人の頼みを断れないためにストレスを受けやすいという面があります。

 
また一度生じた感情や興奮が継続しやすいため、これまで継続していた感情がガクッと落ち着くとその落差から抑うつ状態になりやすいと言えます。

 
 

テーレンバッハのメランコリー親和型気質

1961年に提唱されたこの気質は下田の執着気質とほぼ同様の特徴を持っています。テーレンバッハの観点では、執着気質の特徴に付け加えて

 
・常識を重んじ、他者との円満な関係を心掛ける他者中心の考え方
・自己に対する高い要求水準

 
などがあげられ、この気質を持つ人は他者からの評価を気にし、問題が起きると悲観的になり自分を責める傾向がみられます。
 
 

ストレスとのかかわり

 
一般的にうつ病の原因はストレスであると考える人は多いかもしれません。実際のところ、うつ病にはストレスが大きく関わっていると考えられています。
 
ストレスは生きていれば誰でも感じるものであり、また生きてくうえでなくてはならないものではありますが、限度を超えたストレスは心身の健康に大きな影響を与えます。
 
うつ病の発症のきっかけとして特に考えられるのは、「人間関係によるストレス」「環境が変化したことによるストレス」の2つです。
ストレスは悪いことが起こったときだけでなく、いい変化が起こったときにも感じることがあり、それをきっかけにうつ病になることもあります。
 
 

早期発見が大切

 
うつ病は様々な要因が重なり合って発症する疾患です。
また、うつ病は、だれがいつなってもおかしくないといわれるほど一般的な病気です。したがって、全ての人に、うつ病の原因、予防についての理解が必要ということでしょう。
 

うつ病の治療では早期発見、早期治療が大切になってきます。しかし心の不調は、本人でさえも気づかないことも多く、発見が難しいという問題があります。
 
うつ病の兆候を見逃さないためには、「いつもと違う」様子に気を配ることが大切です。「なんだかいつもと違う」と感じたら、誰かに相談してしましょう。また、周囲にいつもと様子が異なる人がいれば、その人とコミュニケーションをとってみてください。
 
うつ病についての正しい理解と共に周囲からのサポートを受けることが、うつ病患者にとってとても重要なことなのです。
 
 
【参考文献】
(1) メンタルナビ http://www.mental-navi.net/utsu/rikai/byoritsu.html
(2) 渡辺昌祐(川崎医療福祉大学臨床心理学科教授)(2006).うつ病は治る 五訂版 保健同人社 pp.14-15,35-46
(3) こころの陽だまり http://www.cocoro-h.jp/untreated/overview/etiology.html
(4) 厚生労働省 こころの耳 http://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/002.html

 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが・かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている

 
 

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